はじめに
令和6年度の中小企業診断士試験《運営管理》第31問では、「交差比率(交差比率分析)」がテーマとして出題されました。これは、売上高・粗利益率・平均在庫額といった数値データから、在庫の効率性を評価する重要な指標です。
この記事では、交差比率の意味や計算方法を丁寧に解説するとともに、実際の過去問を使ってその使い方を学んでいきます。また、類似指標であるGMROI(在庫投資利益率)との違いにも触れながら、実務にも役立つ知識として整理していきます。
交差比率とは?
交差比率(こうさひりつ)とは、在庫効率を測る代表的な小売業の経営指標です。中小企業診断士試験でも定番の出題テーマとなっており、「在庫管理」や「商品分類」関連の問題で頻出です。
交差比率(交差比率分析)とは、平均在庫額(売価ベース)に対する粗利益額の割合を示す指標です。限られた在庫(資産)からどれだけの利益を生み出しているかを評価するために使われ、次のように計算されます。
交差比率(%) = 粗利益額 ÷ 平均在庫額 × 100
粗利益額 = 売上高 × (粗利益率 ÷ 100)
この指標は、商品ごとの収益性や在庫効率を見極める上で非常に有用です。
過去問で学ぶ:運営管理 令和6年度 第31問
下表は、ある雑貨店の販売実績などを商品分類別にまとめたもので、売上高、粗利益率、平均在庫額(売価ベース)が記載されている。この表に記載された商品分類の中で、最も交差比率が低い分類を下記の解答群から選べ。
商品分類 売上高(万円) 粗利益率(%) 平均在庫額(万円) 分類1 180 30.0 30 分類2 100 25.0 50 分類3 240 10.0 24 分類4 80 40.0 10 分類5 400 20.0 40
【解答群】
ア 商品分類1
イ 商品分類2
ウ 商品分類3
エ 商品分類4
オ 商品分類5
正解はこちら
✅正解:イ(商品分類2)
各分類の交差比率を以下の手順で計算します:
- 粗利益額 = 売上高 × 粗利益率(%) ÷ 100
- 交差比率 = 粗利益額 ÷ 平均在庫額 × 100
商品分類 | 売上高 | 粗利益率 | 平均在庫額 | 粗利益額 | 交差比率(%) |
---|---|---|---|---|---|
分類1 | 180 | 30% | 30 | 54 | 180.0 |
分類2 | 100 | 25% | 50 | 25 | 50.0 |
分類3 | 240 | 10% | 24 | 24 | 100.0 |
分類4 | 80 | 40% | 10 | 32 | 320.0 |
分類5 | 400 | 20% | 40 | 80 | 200.0 |
以上の通り、最も交差比率が低いのは「商品分類2(50.0%)」です。
まとめ
交差比率は、「限られた在庫資産でどれだけ効率よく利益を上げているか」を示す重要な指標です。数値の暗記ではなく、「粗利益 ÷ 在庫額」という構造の理解を深めておくと、他の類似問題にも応用が利きます。
- 交差比率が高い=在庫効率が良い
- 交差比率が低い=利益効率が悪い可能性(売上が少ない、粗利益が低い、在庫が過剰 等)
運営管理では、このような実務感覚に近い指標計算がよく問われます。出題形式はシンプルでも、計算精度と選択肢の見極めが得点の鍵を握ります。
おまけ GMROIとの違い(交差比率との比較)
指標名 | 正式名称 | 計算式 | 評価対象 | 主な違いポイント |
---|---|---|---|---|
交差比率 | - | 粗利益額 ÷ 平均在庫額 × 100 | 売価ベースの在庫 | 小売業で広く使われる在庫効率指標 |
GMROI | Gross Margin Return on Inventory Investment | 粗利益額 ÷ 平均在庫原価 | 原価ベースの在庫 | 投資効率性を重視した財務視点の指標 |
GMROIは、仕入原価ベースでの在庫資産に対する利益回収率を示す財務的な指標で、経営判断やバイヤーの仕入戦略の評価などに用いられます。一方、交差比率は小売現場での商品ごとの収益効率を評価するのに適しています。
おわりに
今回は在庫管理の基本である交差比率を扱いました。こうした定量分析の問題は、慣れれば確実に得点源になります。計算力と構造理解の両輪を意識しながら、過去問で実践感覚を養っていきましょう。