SECIモデルから考える2次試験対策、あるいは、開眼へと至るプロセス

中小業診断士試験の2次試験は初学者にとっては捉えどころのない試験のように感じられると思います。

私も初めて二次試験の過去問を解いた時は何を書いたらいいのやら途方にくれたものです。

例えるとしたら、経験の浅い若手職人が、
「手作り感のある高級仕様の自社ブランド革製バッグを一人で製品化しろ」
と言われるくらいの無茶振りです(令和3年事例Ⅲ)

では、どのようにして2次試験に取り組めばいいのかと言うと、

  • 熟練職人のノウハウを標準化、マニュアル化して活用する(事例Ⅲ風)
  • 先達の暗黙知を形式知に変換することで蓄積されたナレッジを体得する(事例Ⅰ風)

これに尽きるのではないかと思います。

今回は2次試験の勉強方法について、SECIモデルを用いて考えていきます。

SECIモデルとは

SECIモデルは、野中郁次郎氏によって提唱された組織におけるナレッジマネジメントのフレームワークであり、
1次試験科目の「企業経営理論」でも出題実績があり、2次試験の事例Ⅰでも問われたことのある論点です。

ベテラン社員の長年の経験や勘、ノウハウといった暗黙知を形式知に変換することで組織全体で共有を図り、
イノベーションを創出するための基礎理論として有名です。

SECIモデルは、らせん構造のモデルとなっており、
以下の4つのプロセスを繰り返すことで知識の創造を行います。

各プロセスの頭文字を取って、SECIモデルと命名されています。

①共同化

共通の経験を通して暗黙知を共有するプロセス。

ノウハウの言語化が不十分だったり、体系的に整理されていない段階なので、OJTなどにより知識を共有します。

いわば、背中を見て覚える段階です。

②表出化

暗黙知を形式知に変換するプロセス。

個人の持つノウハウを言語化、図表化し、知識を可視化します。

マニュアルが整備されていく段階です。

③結合化

表出化された形式知に異なる形式知を組み合わせることで、新しい知識やイノベーションを創出するプロセス。

たとえば、熟練職人の形式知化されたノウハウと若手職人の斬新な発想の組み合わせにより、新しい商品を開発するといった段階です。

④内面化

表出化、結合化によって得た形式知を繰り返し実践し、学習を重ねることで自身の暗黙知として体得するプロセスです。

いわば、コツを掴む段階です。

2次試験はSECIモデルの実践である

捉えどころのない2次試験の対策を進めていくうえで、SECIモデルの考え方は非常に有効です。

中小企業診断士試験は、受験支援団体や受験生のコミュニティが非常に充実した資格試験です。

一発合格道場タキプロといった有志の方々のブログは私自身も毎日のように読みましたが、
その理由は、これらのブログが先輩受験生の皆様のノウハウや経験という暗黙知が形式知に変換された宝庫だからです。

先輩受験生が残してくれた形式知をいかに自身の暗黙知として会得するか。

これこそが、2次試験対策の本質であり、開眼へと至るプロセスだと思います。

それでは、SECIモデルを具体的にどのように応用していくか、見ていきましょう。

①再現答案活用(共同化)

2次試験は正解が公表されません。

正解が公表されない中、受験生の道しるべとなるのが先輩受験生の再現答案です。

当ブログでもいくつか再現答案を掲載していますが、再現答案を通して、

  • 合格答案には何が書いてあるのか
  • 不合格答案には何が書いていなかったのか
  • 汎用性の高い言い回しやキーワード

を学ぶことができます。

熟練職人(先輩受験生)の背中を見て覚えるプロセスですね。

②先輩受験生が形式知化したノウハウを熟読(表出化)

先輩受験生の再現答案がいかにして作成されたのかをひもといていくのが表出化プロセスです。

一発合格道場タキプロ等のブログ、SNS、YouTube、受験校の講義、参考書などを通して、試験で使えるノウハウやテクニックを収集することが大事です。

情報収集を制すものが2次試験を制す、と言っても過言でありません。

様々な形式知に触れ、自身の勉強の糧にしていきましょう。

③自身に合った方法にカスタマイズ(結合化)

当然ながらすべてのノウハウが自分に合ったものであるとは限りません。

たとえば、与件文に使うマーカー一つをとっても、蛍光ペンを用意する人もいれば、私のように4色ボールペンを使う人もいます。

マーキング方法にしても、SWOTで色を分ける人もいれば、設問毎に分ける人もいます(私はSWOT派でした)。

また、多くの方が作成を推奨しているファイナルペーパーも、私は作成しませんでしたが、
これは私がファイナルペーパーを否定しているからというわけでは当然なく、私にはあまりフィットしなかったためです。

このように、様々なノウハウ・テクニックを試行錯誤の上で取捨選択し、

自分に合うようにアレンジを加えながら、2次試験解法をカスタマイズしていくのが結合化プロセスです。

④過去問演習の反復(内面化)

結合化プロセスで自分なりの解法が確立できたら、
過去問演習を繰り返し行い、腑に落ちるまで浸透させ、内面化を図ります。

しっかりと復習を行い、SECIモデルのサイクルを回していくことを意識しましょう。

与件文読解、設問解釈、知識、タイムマネジメント、どこに課題があるのかを見定めたら、
再び、熟練職人(先輩受験生)のノウハウに解決の糸口がないか探します。

そして、再び自分流のカスタマイズを加え、実践を繰り返します。

そうすることで、やがて開眼にいたることができるでしょう。

まとめ

以上、2次試験の勉強方法をSECIモデルの視点で解説してみましたが、いかがだったでしょうか?

1次試験が形式知の試験であるのに対し、2次試験は暗黙知の試験です。

私の暗黙知が他の受験生に少しでもヒントを提供できていれば幸いです。