はじめに
中小企業診断士1次試験「企業経営理論」では、心理学や消費者行動理論が問われることがあります。
本記事では、令和6年度の第40問を題材に、ジョハリの窓とマーケティングリサーチ手法の関係性を整理します。
自己理解と他者評価のズレに着目した問題です。
ジョハリの窓とは?
ジョハリの窓(Johari Window)は、アメリカの心理学者ルフトとインガムが提唱したモデルで、自己理解と他者理解の一致・不一致を4象限に分類したものです。
他人に知られている (他人が知っている) |
他人に知られていない (他人が知らない) |
|
---|---|---|
自分が知っている | 🟦 開放の窓 Open Self 双方が把握する情報 |
🔒 秘密の窓 Hidden Self 本人だけが知る情報 |
自分が知らない | 👀 盲点の窓 Blind Self 他人だけが気づく情報 |
❓ 未知の窓 Unknown Self 誰にも知られていない潜在的情報 |
調査手法とジョハリの窓の対応
マーケティングリサーチでは、消費者の行動・意識・無意識を把握するためにさまざまな手法が使われます。
それぞれの手法が、ジョハリの窓のどの領域にアプローチできるかを整理すると、以下の通りです。
リサーチ手法 | 対応する窓 | 特徴 |
---|---|---|
アンケート(定量調査) | 🟦 開放の窓 | 自覚している情報を質問形式で取得 |
インタビュー調査 | 🟦 開放/🔒 秘密の窓 | 回答の深掘りにより隠された情報も得られる |
行動観察調査 | 👀 盲点の窓 | 本人が気づいていない行動を第三者が把握 |
深層心理調査・投影法 | ❓ 未知の窓 | 潜在意識や無意識の探索に有効 |
過去問で学ぶ:令和6年度 企業経営理論 第40問
下図は、「自分でわかっている」自己と「他人がわかっている」自己の一致・不一致を、窓のように見える4つの枠に分類したジョハリの窓と呼ばれる概念図である。
企業が消費者の自己に関するデータを収集する場合、どのリサーチ手法が、どの窓の自己データ収集において有効かを記した記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
〔解答群〕
ア インタビュー調査は、どの窓の自己データの収集についても有効ではない。
イ 行動観察調査は、「開放の窓」についてのデータを得るために有効ではない。
ウ 行動観察調査は、「盲点の窓」についてのデータを得るために有効である。
エ 定量的なアンケート調査は、「開放の窓」と「盲点の窓」についてのデータを得るために有効である。
オ 定量的なアンケート調査は、「未知の窓」についてのデータを得るために有効である。
正解と解説を表示
✅ 正解:ウ 行動観察調査は、「盲点の窓」についてのデータを得るために有効である。
- ア:誤り。インタビューは「開放の窓」や「秘密の窓」の情報収集に有効。
- イ:誤り。行動観察では、他人から見える行動(=開放の窓)も把握できるため、「有効ではない」という記述は不適切です。
- ウ:正しい。盲点の窓は本人が無自覚なため、観察が有効。
- エ:誤り。アンケートでは「盲点」は基本的に把握できない。
- オ:誤り。未知の窓はアンケートでは引き出せない。投影法などが必要。
まとめ:試験対策のポイント
- ジョハリの窓は「誰が情報を知っているか」に着目するフレームワーク
- マーケティング調査は手法ごとに取得できる情報の「深さと性質」が異なる
- 盲点や未知の窓をどう扱うかは、顧客インサイト発見に直結する重要テーマ
おわりに
令和6年のこの設問は、心理学的概念とマーケティング実務をつなげて考える力を問われました。
この問題を機に、ジョハリの窓とリサーチ手法の使い分けへの理解を深めましょう。