中小企業診断士試験の「企業経営理論」では、グローバル戦略に関する出題が頻出します。中でも、企業の国際展開を理解するうえで欠かせないのが I-Rフレームワーク(Integration–Responsiveness Framework) です。
この記事では、
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I-Rフレームワークの基本構造
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4つの戦略タイプの違いと特徴
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令和6年度の第11問(企業経営理論)の過去問演習
を通じて、I-Rフレームワークの理解を深めていきましょう!
✅ I-Rフレームワークとは?
企業が国際展開を行う際には、次の2つの圧力に直面します。
圧力 | 内容 |
---|---|
統合(Integration)圧力 | グローバル全体での効率化・標準化を求める圧力 |
現地対応(Responsiveness)圧力 | 各国市場のニーズに柔軟に適応する必要性 |
この2軸の強弱を組み合わせて、企業の国際戦略は次の4つに分類されます。
🌍 I-Rフレームワークの4つの戦略タイプ
📊 I-Rフレームワークの4象限マトリクス
現地対応圧力:高(Responsiveness) | 現地対応圧力:低(Responsiveness) | |
---|---|---|
統合圧力:高(Integration) | 🔷トランスナショナル戦略 標準化と現地対応の両立を図る 知識共有・組織連携がカギ |
🔷グローバル戦略 標準化重視・本社主導 規模の経済を最大化 |
統合圧力:低(Integration) | 🔷マルチナショナル戦略 現地適応重視・子会社主導 各国に合わせた独自運営 |
🔷インターナショナル戦略 海外展開は最小限、輸出中心 本社の関与も限定的 |
📝 各戦略タイプの簡易まとめ
戦略タイプ | 特徴 | 例 |
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インターナショナル戦略 | 海外展開は限定的で輸出中心、本社主導 | 一部の中小企業、工業製品輸出型 |
グローバル戦略 | 世界市場に一括対応、標準化重視、本社集権 | コカ・コーラ、インテル |
マルチナショナル戦略 | 現地ごとに対応、子会社に裁量、非中央集権 | ネスレ、ユニリーバ |
トランスナショナル戦略 | 標準化と現地適応の両立、知識共有ネットワーク | トヨタ、P&G |
🧪【過去問実践】令和6年 企業経営理論 第11問
ある企業では、国際化に際して、「自社の事業特性を考え、標準化を最小限に抑えながら、現地適応を最重要視する」という方針を立てた。
この方針と合致する、I-Rフレームワークに基づいた経営スタイルに関する記述として、最も適切なものはどれか。ア:意思決定の権限や経営資源は海外子会社に分散され、親会社は子会社と緩やかにつながる。
イ:親会社が海外子会社を公式的に管理・統制し、子会社間の調整を行うが、日常業務の意思決定の権限や経営資源の多くは海外子会社に分散される。
ウ:各海外子会社が密接につながるネットワークとなり、各地での学習成果を企業全体で活用する。
エ:現地化と標準化の両立を図ることの負荷を下げるために、現地企業との戦略的提携体制を整える。
オ:重要な意思決定や経営資源は本国や親会社に集中し、集権的に海外子会社を統制する。
正解と戦略タイプの解説を表示する
✅ 正解:ア(マルチナショナル戦略)
- 現地子会社に大きな裁量と権限を持たせ、本社は全体の方向性を調整する程度
- 各国市場にカスタマイズした戦略を展開
- 「標準化は最小限、現地適応最重視」という条件にぴったり一致
❌ その他の選択肢と対応する戦略タイプ
選択肢 | 戦略タイプ | 内容 |
---|---|---|
イ | トランスナショナル戦略 | 管理・統制しつつも、子会社にも分権。本社主導と現地裁量のハイブリッド。標準化との両立を図る。 |
ウ | トランスナショナル戦略 | 子会社間のネットワークによる知識共有が特徴。標準化と現地適応を同時に目指す。 |
エ | トランスナショナル戦略(戦略的提携型) | 提携により標準化・現地対応を両立しようとするアプローチ。 |
オ | グローバル戦略 | 本社集権型で標準化を徹底。現地対応は最小限。本問の方針とは真逆。 |
🎯 まとめ
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I-Rフレームワークでは、企業の国際展開戦略を「統合圧力」と「現地対応圧力」の2軸で分析。
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各戦略タイプをしっかり区別しておくと、選択肢の違いがクリアに見える。
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選択肢の文面を読む際、「どの戦略の特徴か?」を判断できるかがポイント。
💡 学習アドバイス
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この問題は、単なる暗記ではなく「企業の方針=どの戦略か?」を論理的に読み解く力が問われています。
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特に「トランスナショナル戦略」はややこしいので、マルチナショナル/グローバルとの違いをしっかり整理しておきましょう。
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フレームワークごとに典型フレーズ(本社主導/子会社主導/ネットワーク連携など)をまとめておくと時短にも効果的!