補助金申請を通して中小企業診断士試験2次試験の本質に触れたような気がした話

中小企業診断士試験に限らず、資格の勉強によって得られるメリットは、普段の仕事で活かせる知識やスキルが身につくことだと思います。

実際に私は中小企業診断士2次試験の勉強中に、たまたま仕事で事業承継・引継ぎ補助金の申請に携わることになり、試験勉強で得た知識やフレームワークを活用して事業計画の作成を行い、補助金の交付を受けることができました。

中小企業診断士試験の勉強を行っていなかったら、補助金交付という成果をあげることはなかったと思います。

また、補助金申請に必要な事業計画の作成を通して、2次試験で求められている本質的な部分に触れたような気がします。

事業承継・引継ぎ補助金とは

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継を契機として新しい取り組み等を行う中小企業等及び、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業等を支援する制度です。

(事業承継・引継ぎ補助金ホームページより引用)

事業承継は、近年の事例Ⅰでも扱われるケースが増えているように、今後も中小企業にとって重要なテーマのひとつであり続けるでしょう。

私の勤めている会社は、昨年、以前よりお取引のあった企業をM&Aにより買収しました。

買収先の企業については私もよく知っている会社であり、社長とも懇意にさせていただいていたこともあって、PMI(経営統合プロセス)に参加していました。

そんな中、ちょうど中小企業診断士試験の勉強をしていた私は、今回のM&Aが事業承継・引継ぎ補助金対象になることを確認し、上司に申請を行いたいと申し出たのでした。

補助金申請の事業計画作成から見えてきたもの

事業承継・引継ぎ補助金では事務局が用意したフォーマットに合わせて事業計画を作成する必要がありました。

記入すべき項目をいくつか抜粋します。

  1. 自社の既存事業の概要
  2. 地域への貢献内容
  3. 事業承継を機に取り組む新規事業の概要
  4. 新規事業に取り組むことによって生まれる既存事業とのシナジー
  5. 新規事業が対象とする市場、顧客、競合、商品(サービス)
  6. 新規事業の事業計画(6ヶ年)及び売上計画

これらの項目を記入するにあたって、中小企業診断士試験の勉強を通して身につけた知識やフレームワーク、2次試験的な考え方が非常に力を発揮したのです。

たとえば、「1.自社の既存事業の概要」で言えば、SWOT分析やVRIO分析による環境分析を行いました。

「2.地域への貢献内容」は事例Ⅱの頻出テーマですし、
「3.事業承継を機に取り組む新規事業の概要」は、環境分析によって抽出した自社の強みを活かすことを念頭に内容を組み立てました。

「4.新規事業に取り組むことによって生まれる既存事業とのシナジー」は、関連多角化によるコアコンピタンスの多重利用という観点で考え、
「5.新規事業が対象とする市場、顧客、競合、商品(サービス)」は、マーケティングの4Pがそのまま使えました。

「6.新規事業の事業計画(6ヶ年)及び売上計画」は、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)が伸びていく計画を立てました。
付加価値額については令和4年の事例Ⅳでも問われていましたが、事業計画を作成していく中で、試験勉強の世界と実務の世界がつながったような感触があったのを今でもおぼえています。

補助金申請を通して見えた2次試験の本質とは

よく2次試験は紙上コンサルティングであると言われますが、補助金申請を通してまさにそのことを実感しました。

補助金を上手に活用することや事業計画を作成することは、中小企業を支援する上で非常に重要な要素であり、中小企業診断士にとって必要なスキルと言えるでしょう。

2次試験は、中小企業診断士に必要なスキルが養成できるように設計されているのだと感じました。
これこそが、2次試験の本質なのではないでしょうか。