【事例4対策】残余利益について

先日のTAC2次実力チェック模試の記事で、事例4で残余利益に関する問題が出題されたと書きました。

aotaro-kaizen.hatenablog.com

せっかくなので、残余利益について自分用のあんちょこを作ります。知識を定着させるには、アウトプットが効果的ですからね。

残余利益とは?

残余利益は下記の式で求められます。

残余利益=利益-資本コスト

この式が意味するところは何でしょう?

それを考える前に資本コストの復習をしたいと思います。

資本コストとは、資金調達にかかるコストのことです。

たとえば、新規事業を始めるために1000万円を株式発行により資金調達するとします。株主の期待収益率が5%の場合、株式発行により1000万円を調達する際の資本コストは、1000万円×5%の50万円です。株主は出資の見返りとして50万円の配当金を求めますが、新規事業で1000万円の資本に対して20万円の利益しか得られなければ、株主の期待する配当金を支払えないことになります。

反対に新規事業で100万円の利益を得られた場合はどうでしょう? 株主の期待する配当金50万円を支払っても手元に50万円が残ります。

再び残余利益の求め方を見てみましょう。

残余利益=利益-資本コスト

先ほどの例で言うと、配当金を支払った後に手元に残った50万円が残余利益ということになります。

残余利益で何がわかるのか?

一つ目は企業価値の算定です。残余利益は株主の期待収益率を超過した余剰の利益と見なすことができるため、大きければ大きいほど企業価値が高いと判断されます。

二つ目は事業部毎の業績評価です。事例4の対策としてはこちらが重要です。

事業部毎の業績評価にはROI(投下資本利益率)がよく使われますが、ROIは投下資本の効率性を測る指標です。ROIだけで業績評価を行った場合、利益額の大小が考慮されなくなる恐れがあります。残余利益は、このようなROIの欠点を補完する指標として活躍します。

どちらの事業部が優れているか?

それぞれ異なる事業をしているA事業部とB事業部があり、下記の業績だったとします。資本コストは両事業部とも5%です。

  • A事業部 投下資本100万円、利益20万でROIが20%、残余利益が15万円
  • B事業部 投下資本1000万円、利益100万円でROIが10%、残余利益が50万円

ROIだけで事業部の業績評価を行うと、50%のA事業部に軍配が上がります。しかし、ROIの低いB事業部がA事業部より評価が低くなることには違和感があります。なぜなら、手元に残るお金、すなわち残余利益が多いのはB事業部の方だからです。このように、ROIだけで事業部の業績評価を行うと、利益額の大小が考慮されないため、そこを補完する指標として残余利益が重要な役目を果たすのです。

これまで見てきた通り、残余利益はROIの欠点を補っていますが、残余利益にも欠点があり、その欠点はROIによって補われています。残余利益の欠点とは、利益額の規模が大きく異なる事業の比較には向かないことで、そのような比較を行う場合は、比率で表示されるROIが向いています。

つまり、ROI、残余利益にはそれぞれに長所、短所があり、お互いに補完し合っているので、状況に応じて使い分けるのが正しいということになります。